第7回 趣味か?商売か?
第7回 趣味か?商売か?
(コミュニケ1999年10月号掲載)
我々アンティークを扱う業者は、もともと趣味で骨董を集めていて、やがて本職になってしまったという人が、けっこう多いようです。古物商になるためには、警察に行って鑑札を貰うわけですが、これが全国で毎年1千件以上登録があるというのですから凄い数字です。
一口に古物商といっても、様々な形態があります。試験があるわけでもなく、申請さえすればよほどのことがなければ、鑑札が貰えます。
つまり、不況の影響で働くあてがなく、仕方なく古物商になる人が増えているわけです。
私くらいの歳になると、それこそ就職の先もなかなか見つけにくく、そうした多くの古物商の人に今まで出会ってきました。
そういうわけで私も時々、「業者になりたいのだが、どのような手続きが必要か」とか「どこで仕入れるのか」など、相談を受けることがあります。そんな時はまず、「考え直された方がいいですよ」と返事をすることにしています。というのは、趣味で始めた人は、どうしても自分が購入した小売りの値段が頭の奥にあって、商品を仕入れる際に、つい高値で買ってしまうからです。ところが、商売となると、いろいろ経費が必要ですし、家族も養っていかなければなりません。
そこへ持ってきて、骨董屋は生活必需品と違って、いつ売れるか分からない回転率の悪い商売です。しかしある程度は店に商品を置いておかないと、お客さんの足は遠のいて行きます。
また、自分が気に入って買った物でも、その商品の相場が下がってしまえば、別の売れ筋商品を仕入れるために損を覚悟で手放さなければならないケースも出てきます。いつまでもコレクター気分では商売はやって行けません。
国内で仕入れしようとする場合は、市場(花や魚などと同じように)へ仕入れに行きます。ところが日本という国は情実の社会です。道具屋の2代目でもない限り、新参者ではなかなかセリで落としてくれません。しまいには経験不足から、とんでもない贋作を高値で買わされたりします。(これは私自身、何度も経験したことです)
それでもアンティーク屋をやりたいという人には、私は自分の経験から、西洋アンティークをする事を奨めます。それには私なりにいくつかの条件が必要と思っています。それは、
1.―ある程度の日常会話が英語で話せる人。
2.―海外旅行が苦痛でない人。
3.―孤独でも頑張れる人。
4.―目先の利益のみを追求しない人。
5.―芸術を愛する人。です。
一言で言えば西洋アンティーク屋は個人輸入の世界だと言えます。ロンドンの蚤の市では「おまえは初心者だから売らない」とか、「若いから売らない」なんて誰も言いません。日本の骨董の世界が閉鎖的な序列を重んじるのに対し、イギリスでは商売になれば誰にでも売ってくれます。が、しかしそれで「もう商売はうまく行く」と思ったら大間違いです。
(奥さんのコニーのフラワーショップ)