第16回 アンティーク屋泣かせのシルバーウエアー
第16回 アンティーク屋泣かせのシルバーウエアー
(コミュニケ2000年7月号掲載)
当店では、英国アンティークを扱う店として当然ながら、銀製品を数点は常に置いていますが、これがあまり売れないというのが現状です。お客様からはよく「銀のスプーンを見せてほしい」とかいう注文はあるのですが、お見せすると、たいていは「高すぎる」という返事が返ってきて、二の足を踏まれることが多いのですが、それは欧米では日本よりはるかに銀に対する評価が高いからなのです。
イギリスでは銀製品を専門に扱っているアンティークショップがかなりありますし、値段も日本の銀製品に比べるとかなり高いといえます。それでも何とか安くシルバーウェアーを手に入れたい人は、私は日本の銀製品(一流ホテルあたりから出たもの等)を探すことをお奨めします。
イギリスではシルバーウェアーにはホールマークという統一したマークで「銀」であることを保証しています。ルーペでスプーンに刻まれているマークを覗いてみると、ライオンや王冠等のマークとアルファベットを組み合わせたマークを見ることができますが、これを「ホールマークブック」を用いて調べれば、生産地と年代が解るようになっています。
例えば、「このスプーンは1915年のシェフィールドで造られたものである」という具合にです。
シルバーウェアーは重量とデザインと細工料が一体となって価格を決定しているため、値段が日本に比較してはるかに高くなるわけです。
最近では、イギリスのテーブルセッティングや、アフタヌーンティーの習慣が雑誌等で盛んに取り上げられ、銀食器についてもようやく注目されだしました。日本での銀製品の価格が欧米並みになる日も近いかも知れません。この機会にテーブルウェアーを手に入れたいと思われる方は、最初からカトラリーセット等の高価な物からと無理をせず、単品のフォークやスプーンから始めてみるのも良いでしょう。また、安価だけれど、デザインの良い銀メッキのスプーンやナイフも楽しいと思います。
銀製品は、金属なのにステンレスのような冷たい感触がなく、温かみさえ感じられて、一度使ってみると手放せなくなります。きっと毎日のお茶の時間が待ち遠しくなります。
(ホールマークブック)
このエッセイは10年以上前に書き上げたものですので、現在の状況と違う点があるかも知れませんがご了承下さい。