第2回 家具との出会い
第2回 家具との出会い
(コミュニケ・1999年4月号掲載)
あれは確か初めてのイギリス旅行での、カムデンロックの蚤の市(フリーマーケット)だったと思います。マーケットのはずれに、素敵な椅子が3本並べて売られていました。見てみると日本のアンティークショップで売られている値段より、比較にならないくらい安いのです。
店主は「これは1900年頃のもので、材質はウォールナットという良質の差材で買い得だ」と盛んに奨めます。確かに安いことは安いのですが、手荷物で機内に持ち込んで日本に持ち帰ることは大きすぎて不可能です。しばらく躊躇していますと、彼は「今買ってくれるなら20%値引きする」と言い出しました。
私は、「日本へ送るのにどれだけ費用が掛かるか分からないので、調べてから明日もう一度来る」と言いました。すると、「これは良い商品だから、すぐ売れるかも知れないので、いくらか手付けを支払ってくれ」と言い出しました。私はしかたなく、5ポンド(およそ千円)を支払って彼の電話番号を聞いて、ホテルへ戻りました。
翌日、日本の運送会社のロンドンオフィスに出向いて、椅子の大きさと個数を述べて、送料を確認しますと、なんと15万円ほど掛かるとのことでした。私はびっくりしました。これでは、いくら椅子そのものが安くても、送料を考えれば、日本のアンティークショップで買った方が安くつきます。しかたなく私は、あの椅子の店の主人に電話して、キャンセルせざるをえませんでした。
後にアンティーク家具を扱うようになって、単品で家具を海外から送ることが、いかに高く付くか身を持って体験した次第です。やはり家具は海上コンテナで大量に輸送しなければ、コストが引き合いません。
エドワーディアン(1910年ごろ)のチェアー