第17回 アンティーク家具の修理と塗装について・その1
第17回 アンティーク家具の修理と塗装について・その1
(コミュニケ2000年9月号掲載)
「リペアーの工房を持たずしてアンティーク家具屋はやるな」これは私の持論です。どんなに良い家具も、50年、100年と使われていくうちに、傷やガタツキが生じてきます。その度にプロのリペアマンが丁寧にメンテナンスをするというのがイギリスの習慣だからです。
実は初めて8年前にイギリス家具を扱ったときは、修理、塗装を現地で依頼していました。また、配達についても運送業者に依頼し、着払いで対応していました。そのため日本での修理、塗装、配達の人件費が節約でき、その分価格も安く設定できたわけですが、これが大きな間違いでした。
ある日、チェアーのセットを購入していただいたお客様から、「グラグラして具合が悪いので修理して欲しい」と電話がかかってきました。現地で修理しているからそんなはずはないのだが・・・と思いながら現物を見てみると、確かに接着剤で継いだ跡はあるのですが、それが剥がれてしまってグラグラとしているのです。分解してみると、中でダボが折れてしまっていました。こうした苦情が相次いだため、「このままでは信用を無くしてしまう、今後はリペアーに力を入れよう」と決意したのです。
今では、チェアーについては、すべて1度分解しますし、テーブルについてはすべて塗装し直します。テーブルなんかで特に状態の悪い物は、人件費を考慮すれば全く採算が合わない物や、赤字の物も時々発生しますが、大事な資源と思って、できるだけ修復に努力はします。それでも中にはダメージがひどすぎて修復不可能という物も出てきます。そんな時はスマッシュ(つぶす)して修復のための材料にしたりします。
長年家具を扱ってきて、結局リペアーに力を入れてきたことが良かったと今になって痛感させられます。
時々お客様から、他店で購入された家具の修理を頼まれたりしますが、今のところ当店のお客様のメンテナンスだけで対応しきれないほどですので、原則としてはお断りしています。
イギリスの業者のレストアーの様子
現在では1960年以降のイギリスのビンテージ家具を中心に、ビジネススタイルを変えましたので、それ以前の家具の仕入れは行っていないため、古い家具の修理には対応しておりません。
このエッセイは10年以上前に書き上げたものですので、現在の状況と違う点があるかも知れませんがご了承下さい。