第21回 なじみのお客とのコミュニケーションが店を作る
第21回 なじみのお客とのコミュニケーションが店を作る
(コミュニケ2001年2月号掲載)
当社では、毎回コンテナがイギリスから到着する頃になると、おなじみのお客様にハガキでコンテナ到着のご案内を送っていますが、その数が前回は1700件を越えました。仕事を始めた当初は、僅か50件しか案内を出せなかった事を思えば、ずいぶんお客様の数も増えたものだと自分でも驚いています。と言っても必ずしも一度でも当店においでになったお客様すべてにご案内を送っているわけではないのです。
この人なら僕と波長が合いそうだなと思う人とか、アンティークの知識がなくても、本物を見分ける感性を持っている人とか、芸術を愛する人とか、そういう人に的を絞って案内をさしあげているのですが、こういう人と話をしていると、楽しくて知らないうちに時間が経ってしまうし、ご案内をさしあげると、次回には素敵なお友達を連れてやってきたりされます。
せっかく海外に行って苦労して手に入れた珍しい物だから、こうしたお客さんに喜んで買ってもらうと、本当にアンティーク屋をやっていて良かったと思います。一方、価値の解りそうもないお客にさんざん値切られたあげく仕方なく売った場合はなんとなく後味が悪いものです。
こんなことを言うと、「お前の店は人を差別するのか!」と言われそうですが、アンティークはリピートの効かない一点物が基本であり、売れてしまえば二度と手に入らないものも多いため、こうした売り方が許されても良いのではないかと私自身は思っています。
そもそもアンティーク屋というものは、お客様と造ってゆくものだと私は思っています。マニアが店に来て、その人から新しい知識が加わり、今度の買い付けではこんな物を探してきて欲しいと注文を受ける。現地で、業者やコレクターに会って、さらに新しい知識が身に付く。こうして店はその独自のカラーを造ってゆき面白味を増してくるものだと思います。
しかし、ダイレクトメールの数も2000件を越えれば、それ以上は増やさないでゆくつもりでいます。それ以上になればどうしても仕事が大雑把になり、お客とのコミュニケーションがとれなくなり、大量仕入れ、大量消費の無責任な店になると思いますし、いつもお客様の顔を思い浮かべることのできる距離で仕事をしてゆきたいと思うからでなのです。
(ランカシャーの初出し屋)
このエッセイは10年以上前に書き上げたものですので、現在の状況と違う点があるかも知れませんがご了承下さい。